用語の標準化と看護診断
第9回日本看護診断学会学術大会
2003年6月14日〜15日,福岡県・福岡国際会議場において第9回日本看護診断学会学術大会が開かれた。
参加者は約2,300人。
メインテーマは「看護診断−看護の共通用語確立への貢献」。
小田正枝氏(西南女学院大学)は会長講演で,看護界を取りまく患者記録のコンピュータ化,リスクマネジメント,看護用語の標準化などの要因は看護実践に影響しており,看護過程の要である看護診断において,看護知識を臨床推論と臨床判断の形で活用する能力が求められると語った。
また,日本とアメリカとの看護過程の発達の経過を紹介するとともに,クリティカルシンキング能力,アセスメント能力の向上などを教育課題としてあげた。
今回,招聘講演は2題予定されていたが,NANDA会長のメアリー・アン・ラビン氏による「21世紀の看護診断とその根拠」は,ラビン氏の体調不良のため,元会長のケイ・エイヴァント氏に変更になった。
また,もうひとつの招聘講演,中国護理学会の李秀華氏による「中国における看護事情」も,SARS問題の影響で李氏が来日できず,江川隆子氏(大阪大学)による教育講演に代えられた。
ケイ・エイヴァント氏は講演で,看護診断の歴史的発展過程を述べた。そのなかで,ナイチンゲールにおいて,すでに看護診断・介入・成果があったと語った。
ナイチンゲールはクリミア戦争での兵士の死因の疫学的調査をし,食料や衛生面などの環境の悪さが原因であると,表やグラフを使って説明した。
つまり「疾患」ではなく「状態」が問題であることを指摘し,兵士の死亡率を下げるのに貢献した。
また,EBMとEBNについて触れ,医療が主に「治療」を研究の焦点にするのに対し,看護は主に「患者」に焦点をおく。
用語も医療が「疾患」を診断としてあげるのに対し,看護は「現にある,あるいはこれから起こるであろう健康上の問題に対する人間の反応」を診断としてあげると,その違いを明らかにした。
シンポジウム「看護診断とIT記録の変化」は,記録の電子化をテーマに扱ったもの。
その背景には,厚生労働省が掲げる医療情報システム構築のための目標として,電子カルテに関し,@平成16年度までに全国の二次医療圏(全国360か所)ごとに少なくとも1施設の普及をはかる,A平成18年度までに全国の400床以上の病院の6割以上に普及させる,がある。
シンポジストのひとり,田村やよい氏(厚生労働省医政局看護課長)は,厚生労働省も財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS)に委託し,看護行為や状態に関する用語の収集と分類整理をしている。
また看護実践用語標準マスターの作成もすすめられていると語った。
田村氏は今後の課題として,
@看護活動全体の用語の標準化
(情報・判断・計画・結果評価マスターの作成)
A標準化された用語の教育への適用
(雑誌,教科書などへの普及・定着)
B国際的に開発・活用されている用語との整合性の検証
C電子化された看護記録の活用
(患者情報の保護とともに)
などをあげた。
シンポジウムでは他に,美代賢吾氏(神戸大学医学部附属病院医療情報部)により電子化によって何を知りたいのか,何をしたいのかを明確にする必要性が問いかけられた他,国立病院九州医療センター,小倉第一病院,福井医科大学医学部附属病院の電子カルテの実際例が紹介された。
松木光子氏(日本赤十字北海道看護大学)も,教育講演のなかで,当初看護診断は看護用語の明確化であったものが,IT化のなかでコンピュータによる記録のための共通言語としての意味合いが強くなってきたと述べた。
また,多く使われている共同問題に対し,医師のコンセンサスが得られていない,共同問題を使わなくてもケアに変わりがないという研究もある,などを指摘した。
他に,一般演題,ワークショップ「正しく学ぶ看護診断」,フォーラム「チーム医療の中の看護診断」,交流セッション「看護診断と標準看護計画とのリンケージを可能とするシステム」などが行なわれた。
次回の第10回の学術大会は,江川隆子会長(大阪大学)で,2004年6月19日〜20日,大阪・グランキューブ大阪(大阪国際会議場)で開かれる予定。
メインテーマは「電子カルテ時代の看護診断」。
ノーマ・ラング氏,マジョリー・ゴードン氏などの招聘講演が予定されている。
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