臨床現場と研究者の有機的な関係を求めて
日本看護技術学会第2回学術集会
2003年9月13・14日,日本看護技術学会第2回学術集会が1,200余名の参加を得て,初秋の爽やかな季節,岩手県立大学において開催された。
今回のメインテーマは「実践と臨床をつなぐ−確かな効果をもたらす看護技術」。
今大会長,武田利明氏(岩手県立大学看護学部)による会長講演「看護における実証的研究の取組−技術の根拠と効果の探求」で幕を開けた。罨法(冷・温)の有効性に関して,ラットを使った評価実験をもとに,病理学的なデータ標本を示しながら,講演された。
それによれば,従来から薬液の血管外もれに用いられていた温罨法と冷罨法の比較実験で,冷罨法が肉眼的にも組織障害を抑える知見を得たこと。また,リバノール湿布の有効性に関する評価実験でも,室温保存では質的所見は得られなかったが,冷リバ湿布(冷保存)の有効性が示され,これは冷蒸留水でも同じ効果が得られたという。また,実験結果だけではなく,冷罨法によって過剰な一酸化窒素を抑えられるというその作用機序も示された。
最後に,昨年の学術集会のコアセッションでの出会いにより,臨床現場と研究者による交流と協力が,今回の看護技術のエビデンスを得ることにつながった経緯を語り,今後のさらなる研究の積み重ねを参加者に呼びかけた。
続いて川嶋みどり氏(日本赤十字看護大学・健和会臨床看護学研究所,本学会の理事長)による特別講演「看護ナラティブの蓄積と技術化への道−心に残った場面・人実践を語る意味」が行なわれた。
川嶋氏は,看護実践の技術化をはかるひとつの方策としてのナラティブと,そこからどのように技術化をはかっていくのかを,自身が長年培ってきた技術に対する研究の蓄積を通して語られた。
まず,武谷三男の技術の本質規定を看護技術に汎用し定義している「看護実践における客観的法則性の意識的適用」ということについて,40年余にわたる共同学習と看護実践者らの具体的実践を通してその有用性を確かめてきたこと。
2つの合法則活動,技能と技術の違いを提示し,いずれも実践にとっては重要であり,技術と技能があってはじめて質の高い実践ができる。また,言語化できないゆえに個人の技にとどまっているエキスパートのレベルの高い看護実践の技(技能),その経験知を個々の看護師が語ることが,技術の創造性につながっていく。看護におけるナラティブは,看護学の構築を考えると語るだけではなく,そこから仮説・研究にどうつないできたかを考えることの重要性。またストーリーの考察をしていくなかで概念化がはかられてきて仮説になって検証され,技術化されていく検証の過程に欠かせない事例検討の有用性を語った。最後に「語ることは語り手と聴き手をつなぐ行為である」というハワード・ブロディ言葉を紹介し,私のクリニカルナラティブとして「御蔵島のキタロウ君の思い出」,先輩婦長の闘病体験のナラティブを語り,わが国固有の看護文化から生まれた事例検討を系統的に発展させ,技術化や看護理論の構築に組織的に取り組むことの重要性を語った。
他に今学会の特徴である4つのコアセッション,フォーラム「在宅で安心した生活をささえる看護技術」では,ALS患者である大澤武仁氏が文字盤を介して貴重な体験を語られた。
また真田弘美(金沢大学医学部保健学科・併任:東京大学大学院医学系研究科健康科学
看護学専攻)による教育講演「褥瘡ケアにおける根拠に基づく看護技術の重要性」は,演者の国際褥瘡学会から得た知見を踏まえ,米国などに比べ日本ではV・W度という皮下脂肪や筋層に及ぶ全層損傷が半数を占めていること。平成14年より診療報酬の減算に褥瘡対策が実施されたことを踏まえ,科学的根拠に基づいた褥瘡予防や褥瘡を有する患者への看護技術の提供が必至であることが話された。また,患者のQOLの視点から褥瘡をとらえなおし,褥瘡は予防しなおすことができるエビデンスが実践で示されていることを明らかにし,研究と実践のリンクから生まれる看護技術の重要性が話された。
70題にのぼる一般演題(口演・示説)を含め,臨床と研究をつなぐさまざまな取組の過程・成果が討議され,参加者と一体になった活気あふれる学会であった。 |