助産の新時代を切り拓く
第18回日本助産学会学術集会
2004年3月6,7日,第18回日本助産学会学術集会が東京大学安田講堂・学術総合センタ・学士会館を会場に500余名の参加を得て開催された。大会テーマは「喜びとともにうまれる
その先の助産ケア Joyful Midwifery with Women」。
本学術集会会長・松岡 恵氏(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究所)は,会長講演「喜びとともにうまれる,その先の助産ケア−女性と助産師の新たな関係」で,少子化時代を迎え,助産師数の減少という厳しい状況のなかで,あらためて助産師の専門性を“女性のもつ力を高めるために働く専門職である”ことを確認し,今回のテーマJoyful Midwifery=女性とともにある,に辿りついた経緯を話された。
そして,出産期の女性にとって自身の健康と子どもの健康を守り,妊娠・出産・育児に主体的に取り組みケアの選択を行なうためには,自分の身体の状態を知り,ケア選択にどのような制約があるか理解しておくことが必要である。そのための情報のあり方をニュージーランドで使用されている記録(医療者・女性・医療費の支払用と3枚複写で,女性用の記録は女性自身が管理し,妊婦検診に持参する)を紹介し,今後,医療者と女性が記録を共有することの重要性を語った。
また,女性の身体に関する医療情報とケアに関連した学術的な情報の提供に助産師の参加が欠かせない。一方で女性自身も専門雑誌を読み、学術集会にも参加できるようにするために,より開かれた学会の在り方を考え,今学術集会の企画委員に消費者の女性に加わってもらい,新しい刺激を得,学会開催に反映できた。今後さらに専門職自身,研鑽を重ね,社会とのコンセンサスを得る取り組みをし,新しい時代のJoyful Midwifery with Womenの役割を果たしていくたものモデルと方向性を示された。
次にニュージーランド助産師協会会長Sandy Grey氏による招聘講演「ジョイフル・ミドウィフリー」が行なわれた。助産は“技術(わざ)と科学のバランスの上に成り立っている”とし,妊娠・出産は女性の人生のなかで正常で,健康な生理現象である。女性は助産師と意味のある関係を築きたいと願っている。助産師はそれにどう関わり存在し,女性の記憶に残ることができるかとして,自宅のウォータープールでのお産の実例を示し,その場にいたすべての人々のすばらしいひとときを紹介した。
また,命を生み出すEmotional Lifeに居合わせるために必要な心の知性・知覚・希望・楽観性など,目に目えない精神性をケアすることの重要性を話された。
シンポジウム「喜びにあふれた出産・育児のために」では中根直子氏(助産師ネットワーク・JIMON)が「JIMON10年の活動から見えてきたもの」として,自立した助産師の相互理解と支援をめざしたネットワーク活動から,奥山千鶴子氏(特定非営利活動法人びーのびーの代表)は「おやこの広場の活動から見えてきたこと」で地域のなかで孤立しがちな親子の集う場を作った経緯から,栗原美幸氏(子育て支援サイト 子育てワハハ主宰)が「出産・育児に関わる女性の本音-ネットで語られる言葉から」と題しそれぞれ問題提起した。
中根氏は助産師の抱える問題は大きく「自問」のためのエネルギーが必要だが,それぞれ1人1人がエンパワーメントとして,知る立場から発信する立場への転換をはかってきた10年の活動から報告された。
奥山氏は地域の商店街の一隅から,年齢や立場を超えた人々とのふれあいを通し,子育てに欠かせない親自身の心の安定が得られたこと。今後も新しい風を入れ,地域の財産にできたら,と抱負を語った。
栗原氏は,自身の出産体験を通して,変化した自分と出会い,心の充足の大切さを感じサイトを立ち上げられた。24時間,心の居場所を提供し,何よりも本年で語れる話の中には妊娠・出産に対する質的側面の評価の基軸が機軸をなしていること。最後に語った「愚痴をいうなら意見を言おう」「文句を言うなら提案しよう」「がんばる人には拍手をしよう」という3つの言葉は胸を打った。
他に6つのテーマでのワークショップ,口演・ポスターセッションを含む67の一般演題と多彩な視点から,研究と実践報告を連動し,正に新しい時代の助産を創造するにふさわしい学術集会の内容であった。 |