電子化時代の看護診断を支える看護実践・研究の発展―第10回日本看護診断学会学術大会

 6月19〜20日,大阪府・グランキューブ大阪(大阪国際会議場)において第10回日本看護診断学会学術大会が3,100名の参加を得て開催された。

 メインテーマは「電子カルテ時代の看護診断―Nursing Diagnoses in Electronic Patient Records Era」。 江川隆子氏(京都大学・前大阪大学)は,会長講演「看護の質を高める看護診断」で,看護学と実践の発展に果たした看護理論家の影響を語り,看護診断の開発で看護過程の思考の統一から看護現象の統一,看護用語の統一に至った経緯を示された。そして電子カルテ時代に求められる看護診断の位置づけとして,看護診断が正しく使われているかの検証と評価の問題,そして看護治療へのさらなる研究・開発が急がれることを話された。

 招聘講演T「看護情報科学の解釈とICNPの検証」(ノーマ・ラング氏)は,看護情報科学は,看護データ,情報,知識を取り扱い,問題解決,意思決定のために検索し,最適利用する学術分野であり,言語もその重要な一部であるとし,その応用とICNP(看護実践国際分類)の検証の重要性を示された。そして看護ケアの大部分は医療記録,患者ケア記録,また全国のデータベースにも反映されない目に見えない存在であるが,将来に向けて「看護は目に見える存在→情報システムにおいて」「看護データが活用でき→事実に基づいた質の高い看護実践を促進する」ものにするために,用語の国際分類がいかに重要かを話された。また,ICNPのBATA2 Version1が2005年台湾で開かれるICN大会で発表する予定であると語った。

 続いて行なわれた教育講演「看護情報システムと看護診断を支える看護研究」(中木高夫氏:日本赤十字看護大学)は,わが国の,医療におけるコンピュータシステムの登場から,自身のコンピュータとのかかわりを通して,さらに看護情報システムと看護診断のかかわりを,歴史的経緯を示し解説された。また,看護診断を支える看護研究として,日本独自の記述法・診断指標・関連因子,そして独自の介入も当然出てくるものであるとし,日本の看護研究が看護を必要とする患者現象に集中することが看護の水準を向上させるものである語った。

 招聘講演U「世界の看護情報学と米国のEPRの現状」(ロイ・シンプソン氏)は,看護情報学の定義として,看護実践を改善し,よりよいケアを提供するために技術,研究,また専門家の経験を生かし,看護データ,情報,そして知識を管理するものであるとし,看護情報学を可能にする条件として,情報システムをつくり,ネットワークを構築する,より多くの人がナースになるための教育が受けられる,ナースを取り巻く環境の改善,ケアの改善,などを挙げられた。また米国におけるEPR(電子患者記録)の3つの阻害要因として,@政策,A説明責任,B看護の特性をあげ,政治の側面も大きな要因であると話された。他に招聘講演V「看護情報科学における看護診断の役割」(マジョリー・ゴードン氏)やフォーラム「電子カルテの運用と看護診断」,徹底生討論「電子カルテ時代の看護診断」,事例セッション,そして一般演題発表・ポスターセッション等々多彩なプログラムで学術大会が行なわれた。

 また今回は,日本看護診断学会が10周年を迎え,記念レセプションも行なわれ,新時代にふさわしい内容の濃い,実りある学術大会であった。
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 次回の第11回学術大会は,黒田裕子会長(北里大学)で,2005年7月2−3日,神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催される予定である。