少子高齢社会における看護の責務とは
−理論と実践の統合をめざして−
第24回日本看護科学学会学術集会

 2004年12月4日(土)・5日(日),第24回日本看護科学学会学術集会が東京国際フォーラムにおいて2,800余名の参加を得て開催された。大会テーマを「少子高齢社会における看護の責務とは−理論と実践の統合をめざして−」とし,会長講演・教育講演・シンポジウム・市民フォーラム・交流セッション,そして463題の一般演題で行なわれた。

 ア絹子氏(東京医科歯科大学大学院)は会長講演「患者・病弱者のアドボカシーと看護の責務−高齢者虐待の予防と研究支援ネットワークづくりを中心に」で,「患者の権利に関するリスボン宣言(1981年第34回世界医師会総会)」や「ヘルシンキ宣言(1964年)」など歴史的経緯から,近年の患者や病弱者の権利に関する医療者の意識が世界的に大きな変化があったことを述べた。また,自身の痴呆高齢者・介護家族との出会いを高齢者看護の原体験としてきたこれまでの経験を踏まえ,「家庭内における高齢者虐待に関する調査」の実態調査を紹介し,身体的虐待,心理的虐待の多くが痴呆性高齢者で占められ,逆に看護職や介護職が施設利用者から受ける暴力などの「不快な体験」も痴呆性高齢者からであることが明らかになり,今後さらに老人性痴呆問題を重視していくことの必要性を語った。 また,急速な少子高齢化や経済状態の悪化など社会情勢が不安定な時代に看護職はケアの理念と倫理的課題の明確化など,諸外国の例を見ながら,今後日本の方向がどうなるか,政策への提言をしていくことが求められると結ばれた。

 シンポジウムT「エビデンスとなる看護研究とは」では4人のシンポジストがエビデンスと看護研究について問題提起された。数間惠子氏(東京大学大学院)は「信頼できる研究とは」で,量的研究では研究目的にあったデザインであること,また質的研究ではデータから結果に至る分析の道筋に飛躍がなく辿れることなど,ロジカルチェックを確実にやることが信頼できるアウトカムを得る条件であることを述べた。堀内成子氏(聖路加看護大学)は,「看護におけるランダム化比較試験(RCT)の難しさと楽しさ」でエビデンスをつかう側,つくる側の双方からRCTの難しさと醍醐味を語り,信頼されるデータを出すことが実学としての看護の展開に欠かせないと。正木治恵氏(千葉大学)は,「質的研究でエビデンスは出せるのか」で,どううしたら質的研究からグレードの高いエビデンスを見出すことができるかに,介入とその効果との因果関係が科学的に証明されるためのものとし,「つくる,伝える,使う」という流れの構築が可能かもしれないと述べられた。また,野口裕二氏(東京学芸大学)は「社会学の立場から」で,看護学,社会学において,夥しい数のエビデンスが報告されているが,エビデンスを主張するのではなく,どのような理論モデルのもとでどのような方法で収集されたものかを見分ける能力が重要となると述べられた。

 他に教育講演「家族看護アセスメント尺度の開発と研究プロセス」,シンポジウムU「今,看護実践の現場で何が起こっているのか」,シンポジウムV「設立25周年理事会企画:日本看護科学学会が果たしてきた役割と今後の課題」,また13のテーマでの交流集会など充実したプログラムでの学術集会であった。