叡智と活力―人々が満足するクリティカルケア看護の確立
―クリティカルケア看護学会第2回学術集会

 6月24日(土)〜25日(日),“叡智と活力−人々が満足するクリティカルケア看護の確立”をメインテーマに,「日本クリティカルケア看護学会第2回学術集会」が東京女子医科大学・彌生記念講堂で開催された。

 大会長・寺町優子氏(東京女子医科大学看護学部)は,“人々に貢献するクリティカルケア看護の専門性の探求”をテーマに講演された。
 専門看護のニーズが高まっている現状を踏まえ,優れた専門性の高い看護実践を提供できるかどうかは,正にジェネラリストの力量かかかっていると述べ,クリティカルケア看護の専門性の探求を,@優れた看護実践とそれを支える研究の裏づけ,Aチーム医療の中での独立した看護の役割の確立,Bクリティカルケア看護の発展のための政策提言の3つについて話された。

 特に研究について,看護の優れた実践を提供できるためには,研究に裏づけられた理論,長期に積み重ねられた高度な技術が欠かせない。そうした点ではここ10年,クリティカルケア看護領域の研究は,現状の問題解決のためのエビデンスを示した研究が多くなっている。しかし一時の思いつきや単発的なものではなく,研究のアウトカムが実践に結びつき,何よりも臨床に生かされるものにするためには,継続させていくことが肝心である。
 そのためには個人の研究だけではなく,学会指導の研究会組織が必要で,学会として責任のある看護の方向性を出してゆくこと。それではじめて今後に向けてクリティカルケア看護のガイドラインも示していけるのではないかと語られた。

 また,教育講演「細胞シート工学による組織・臓器の再生治療」では岡野光夫氏(東京女子医科大学先端生命医学研究所)より,細胞シートを温度低下で剥離・回収できる新しいインテリジェント表面の開発により,角膜上皮細胞・膀胱上皮細胞・内皮細胞シートの移植に成功した新たな未来医療の展望が語られた。

  パネルディスカッションでは,黒田裕子氏(北里大学看護学部)・江川幸二氏(神戸市看護大学)の司会で「変わりゆく医療の中でのクリティカルケア看護のあり方」をテーマに,井上智子氏(東京医科歯科大学大学院),栗田園美氏(東京女子医科大学病院),鈴川正之氏(自治医科大学救急医学教室),鈴木利廣氏(すずかけ法律事務所・弁護士)の4人のパネラーが登壇した。

 近年の科学技術の進歩がもたらした高度医療の恩恵と問題を,看護教育の立場から,臨床看護の場から,医学の立場,法律の立場から,幅広い視点で問題提起された。鈴木弁護士からクリティカルケア領域の理解として,高度先進医療は患者家族にとって治療過程が不透明化していく恐れがあること,また困難な倫理的判断を伴う場面がひそんでいることが感じられる,という話が出された。

 フロアーからも,いま“参加型医療”が提唱されているが” クリティカルケア領域での参加型は難しい。そこでキーパーソンの明確化や新たなコーディネータナースの必要性,迷ったら当事者に聞く,など情報開示・コミュニケーションの問題はクリティカルケア領域に限らず,今後の医療の場に求められる課題であることが深く印象付けられた学会であった。