2019年7月号掲載
NURSES' EYE その7
樋口 佳耶 看護師 
“看護疲れ”


 このエッセイが皆さまのお手元に届くのは,ちょうど7月頃だと思います。4月からの頑張りに夏の暑さも重なって,少しお疲れの方もいらっしゃるのではないでしょうか。今月は,“看護疲れ”をテーマにしたいと思います。

 先日,「もう最近,こっちが“看護疲れ”なんですよ」と口にしていたのは,訪問看護をされているMさんです。Mさんは訪問看護師経験が長く,看護師としても大ベテラン。地域・在宅看護について,たくさんのことを私に教えてくれます。そんなMさんが担当している利用者さんのお1 人が,いわゆる「困難事例」状態になっているとのことでした。
 その利用者さんにとって今後どうしていくのがよいのか,主治医をはじめとする多職種間で方針が一致していないこと。いま自分が提供しているケアに意味があるのか疑問に感じながらも,せざるを得ないこと。──そんな話をしながら,「これまでは訪問の度に,『○○さん頑張ろう! 早く治そうな!』って励ましていたけれど,最近はそんな言葉をかける気力がなくて。私,疲れているんだろうなぁって思うんですよね」とおっしゃいました。
 実は,その利用者さんは私も直接関わりがある方です。ただ,頻度としては週に1回お会いする機会があるかないか程度。以前,Mさんとこの利用者さんの話題になったとき,「今週は○○さんにお会いできなくて寂しいなぁ」と言ったのを思い出し,「Mさんはそんなことを思える状況じゃなかったですよね。大変なのに,空気を読まずにあんなことを言ってすみませんでした」と,思わず謝罪の言葉が口をついて出ました。
 するとMさんは,「いやいや,樋口さんみたいな人がいることが大事なんだよ。○○さんにべったり関わっている人は,私も含めてみんな疲れきっているから。樋口さんみたいにちょっと距離がとれて,疲れていない人が入ってくれるのは,○○さんにとってもありがたい話だと思う。だから,樋口さんが○○さんと会ったときは,話を聞いて,優しくしてあげてね」。

* * *

 その言葉を聞きながら思い出したのは,以前働いていた病院での出来事です。所属していた病棟はプライマリーナーシングをとっていて,勤務の日は基本的に,担当している患者さんを受け持つことになっていました。Mさんの言葉を借りると,担当の患者さんが入院している間は「べったり関わる」ことになるので,入院が数か月に及んだ患者さんを担当していたときは,私自身がだんだんと追い詰められるような気持ちになり非常につらかったことがありました。もちろん,一番しんどいのは患者さんだとわかってはいても,です。

 入院している患者さん,訪問看護等を利用している利用者さんのことを真摯に考え,向き合おうとしていると,時にケアを提供している側が疲弊してしまうことがあります。その際はいったん距離をおいて,休息をとれるようにすることが大切ではないでしょうか。私自身の経験を振り返っても,当時欲しかったのは叱咤激励の言葉ではありませんでした。担当患者さんからのナースコールをとってくれるなど,そんな小さな配慮がとても有難かったのを覚えています。
 いま,“看護疲れ”しているかもしれないなぁと思う方,一生懸命に看護をしているからこそ,そうなってしまったのだと思います。自分を責めないでくださいね。「あの人もしかしたら……」と心当たりの同僚がいる方,そのナースが少しでも休憩できるようなサポートをぜひお願いします。それは最終的に,看護サービスの受け手である患者さんたちに還元されるはずです。

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