2018年4月号掲載
物見遊山のフラヌール または聴かずに死ねるかクラシック その02
中木 高夫 看護ウォッチャー
ハイデルベルク②

ハイデルベルクの「哲学者の小径」は京都のそれとは大違い。遊歩者(フラヌール)・Dr.NAKAKIは早くもお疲れのご様子。さて今夜のオペラは……ということで連載第2回の始まり。


10月13日
 朝から散歩。そこそこ暖かい。日本ではまだ半袖の人がいたくらいでしたが,それよりは涼しいでしょうか。
 ケーブルカーの駅を目指して娘宅を出たのですが,いつものとおり一筋道を間違えて,歩いて城山を上がる階段のところに着いてしまいました。まあ,仕方がない。三枝病変バイパス手術後10年以上の身体にムチ打って,階段を登りました。この階段は比較的楽に登れます。息が切れてきたころに城庭に着きました。城内に入るには入場料がいるのですが,もったいないので入りません。城庭からネッカー川が合流し,肥沃なライン川流域を眺め,ベンチに座って休憩。若い日本人が数人,仲よく写真をとっていました。
 もと来た道を降るとアルテ・ブリュッケ(old bridge,古い橋)です。欄干にあたるところ彫刻のある伝統的なヨーロッパの石橋です。それを渡るとフィロソーフェン・ヴェーク(哲学者の小径)の方向を示す道標が見えます。そこからセッセと登って行くのですが,なかなか到着しません。息が切れて切れて,しんどいのなんの。5回くらい休んでやっと目指す哲学者の小径へ。そこは京都の哲学者の小径とは大違い。かなり太い道です。川の向かい側にお城が見えます(写真1)。その道をたどっていくとネッカー川の河畔。新しい橋を渡るとビスマルク・プラッツ。娘の家は街いちばんの繁華街ハウプト・シュトラーセ(中央通り)に入って右折するとすぐです。
写真1 哲学者の小径から見る城の風景

* * *

 今晩のオペラの演目はモーツアルトの「魔笛」。かなり荒唐無稽な筋立てですが,パパゲーノとパパゲーナ,タミーノとパミーナ,ザラストロと夜の女王が3つのペアです。
 【第1幕】時と場所は架空の世界でいいでしょう。王子のタミーノは岩山で大蛇に襲われて気絶。3人の侍女に助けられます。それなのにたまたま通りかかった鳥刺しパパゲーノが,助けたのは自分だと嘘をつきます。パパゲーノは3人の侍女に口に錠をかけられます(「ムムム」)。タミーノは夜の女王の娘パミーナの絵姿を見せられて一目惚れします(「なんと美しい絵姿」のアリア)。夜の女王はザラストロに捕らえられている娘を救い出してくれれば,タミーノに娘を与えると約束。タミーノとパパゲーノは「魔法の笛」と「魔法の鈴」を受け取ってザラストロの神殿に行きます。ザラストロの神殿で魔法の笛と鈴の力でタミーノとパミーナはザラストロの前で対面。おたがいを運命の人だと思います。
 【第2幕】ザラストロはタミーノとパパゲーノに試練を与えます。「沈黙」の試練では話しかけても反応しないタミーノにパミーナは悲しみます。しかし耐え抜きます。「火」の試練と「水」の試練でタミーノとパミーナは力を合わせ「魔法の笛」の力で乗り切ります。パパゲーノは「魔法の鈴」の力でパパゲーナに出会います。夜の女王はザラストロの神殿に侵入しようとしますが,雷に打たれ闇夜に落ちていきます。大祭司ザラストロは,試練に打ち勝ったタミーノ・パミーナたちを祝福し,太陽神の子オリシスとイシスを讃えます。
 「魔笛」には有名なアリアが多く,テレビCM などで知らぬ間に耳にしているものが多いです。個人的には「この美しい絵姿」を歌ったフリッツ・ヴンダーリッヒの絶唱が忘れられません(YouTubeでwunderlich zauberflote taminoと入力すると「Fritz Wunderlich in -The Magic Flute- 1962」が出てきますからぜひ一聴を)。第2幕の夜の女王のアリアもCM でありました。ぼくの授業に出たことのある学生さんは授業終了時をセットした携帯のアラーム音として覚えているのではないでしょうか。
 ハイデルベルクの「魔笛」は小さな劇場です(写真2)。このTheater & Orchester Heidelbergは2年ほど前に新築されました。面白いことに,舞台装置などをつくっている作業場が外から見えるようになっています。
 ドイツのオペラというとモダンな演出が多い(費用節減のため?)のですが,ハイデルベルクの「魔笛」は比較的オーソドックスでした。チケット代は42ユーロ(5,700円)ですから,そんなに高くはありません。地域に根づいていて,終演後に老夫婦が自転車を並べて帰って行くのを微笑ましく感じました。
 晩ごはんは,帰り道にあるビアレストランにしようかな。徒歩10分で帰れます。ビール2杯はいけるな(笑)。
写真2 「魔笛」を鑑賞したTheater & Orchester Heidelberg のホール
(Theater & Orchester Heidelberg のホームページより。http://www.theaterheidelberg.de/

おすすめのYouTube

ドイツ語で「魔笛」を意味する「Zauberflöte」で検索すると名演や名演出の動画がアップされています。
なかでもとても楽しい演出のものをご紹介しましょう。
zauberflöte full bregenzで検索すると水上オペラで有名なブレゲンツオペラの2014年の上演を観ることができます。
※紹介したYouTubeが削除されていることがあります。

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