2018年5月号掲載
物見遊山のフラヌール または聴かずに死ねるかクラシック その03
中木 高夫 看護ウォッチャー
マンハイム①

めざすはマンハイムのテアター。看板を目印にテクテクと,住宅地をヒラリとかわし,路面電車を避けると,目の前には何枚もの垂れ幕が。さて,今回の演目は……。


10月19日(木)
 今日は夕方7時半からマンハイムのNationaltheater Mannheimで,ヴィンチェンツォ・ベッリーニの歌劇「ノルマ」。なんでナショナルシアターなんて英語表記なのか? おそらくStaatstheaterを中途半端に英訳したから。本当のところはわかりませんが,ドイツは連邦国家で,アメリカ合衆国のstateにあたるのがStaatだから,これを国と訳せばnationalでも不思議はないのです。州立劇場と訳されている場合が多いのですが……。
 マンハイムはハイデルベルクからドイツ連邦鉄道(Deutsche Bahn,略称DB〔デーベー〕)で20分くらいにある大都市。ムコ殿の事務所があります。
 マンハイム中央駅の真ん前の広場に「i」のマークの事務所があります。そこで「シティマップ,プリーズ」。もちろん無料。歌劇場のあたりがつきました。
写真1 フリードリヒ広場の給水塔
 広場の続きの駅前大通りをまっすぐ行くと,右手に特徴的なネオバロック様式の給水塔が見えます。立派な建物です。まわりは公園になっています。そこをさらに先に進みます。テアター(シアターのドイツ語読み)への看板が見えました。大通りを右折。テクテクと歩いて行ってもなんだか様子が変です。住宅街みたい。道を間違えた! 後戻りして大通りへ。看板は自動車用だから少し手前に出ていたのですね。失敗,失敗……。

写真2  Nationaltheater Mannheim
 路面電車(トラム)の線路が右折しているので,あわせてそこを右折。目の前の広い広場に大きな長方形のビルディングが見えます。垂れ幕が何枚もかかっています。間違いなくテアターです(写真2)
 時間は夕方6 時前。小腹も減ったので,テアターのカフェでサンドイッチかケーキでも食べよう。

* * *

 ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801~1835)はイタリアのシシリー島で生まれ,33歳のときパリで亡くなっています。ベルカント・オペラという言葉と結びつけられて,美しい声(ベルカント)で技巧的な節回しを多用した楽曲を書きました。その代表作の1つが「ノルマ」。
 【第1幕】紀元前50年頃のガリア地方(現在のフランスあたり。ローマ帝国の属領)が舞台。ローマによって征服されたガリアの民は圧政に苦しんでいた。ガリアの民はローマとの戦いを望み,巫女であるノルマによる神のお告げを待っていた。ノルマはガリア地方のローマ総督ポリオーネとの間に2人の子どもをもうける仲。しかし,ポリオーネはノルマから若い尼僧アダルジーザに想いが移っている。ポリオーネはローマに帰還するように命じられ,アダルジーザの同行を願った。何も知らないアダルジーザはノルマに相談。すべてが明るみに。ポリオーネはアダルジーザを強引に連れて行こうとするが,アダルジーザは決心がつかず,ノルマはポリオーネの不実を非難。
 【第2幕】ノルマは2人の子どもを殺そうとするができず,アダルジーザに2人を連れてローマにポリオーネとともに行くように言う。アダルジーザはポリオーネを説得。しかしポリオーネは拒否。ノルマはガリアの民を集め,ローマと戦うことを宣言。民は狂喜する。そのとき神殿に忍び込んだポリオーネが捕らえられる。ノルマはポリオーネに,アダルジーザのことを忘れれば,命は助けようと話す。しかしポリオーネはそれを拒み,アダルジーザを助けるように嘆願。ノルマはガリアの民に祖国を裏切った1人の女がいることを明らかにする。民は怒るが,ノルマは裏切ったのは自分だと宣言。アダルジーザを助けるノルマの気高い行為にポリオーネは後悔。ノルマは火刑台へと歩みはじめ,ポリオーネも続く。

* * *

 マンハイムのテアターは大きな舞台でベッリーニには向いていないんじゃないかな。舞台には大木がしつらえられていたり(写真3),ドラマ「24」みたいに2階建てに分割したりして,豪勢なものでした。しかし,歌手たちの衣装がどうも現代風で落ち着きません。ガリアの民がなぜセメントまみれのようなのでしょう? 歌もワグナーを歌うように吠え気味です。想像したようなベルカント・オペラではありませんでした。ちょっとがっかりでした。
 翌朝,ムコ殿に“How was the opera?”と聞かれて,マンハイムにはノルマは向いてないようだったと言っておきました。通じたかどうかわからないけど……。
写真3 大木がしつらえられた舞台
( Sung Ha, Miriam Clark, Chor des NTM cHans Jorg Michel
https://www.nationaltheater-mannheim.de/de/presse/fotogalerie-detail.php?PID=2895

おすすめのYouTube

 YouTubeで「norma」と入力して検索すると,ずらっと出てきます。
 「Vincenzo Bellini, Norma(2011)」というのがよいようです。画面に流れるクレジットを読んでみると,スペイン領カナリア諸島グラン・カナリア島にあるテアトロ・ペレス・ガルドス(Teatro Perez Galdos)という劇場での上演の記録だそうです(ここのホームページは英語版もあります。ついているGoogle Mapを見て驚き。ほどんどアフリカですよ,カナリア諸島というのは。ちなみに娘ファミリーはおばあちゃん(オマ)と一緒にこの夏の休暇に行ったらしいです)。歌唱はちょっと吠え気味ですが,衣装も装置もそれらしく,はじめに見るにはいいのではないでしょうか。
 でも,クラシック好きのなかでは,「ノルマ」といえばマリア・カラスです。聴きどこ「清き女神よ」だけでもカラスで聴いてみてはいかが。

追伸:YouTubeでほかの演奏も見て,これは衣装もローマ風だなあと思ったのが
 Vincenzo Bellini-Norma(Joan Sutherland,1978)with multi-subtitlesです。
 コメントを読んでいるとこのビデオのプリマであるジョーン・サザランドがいいの,いやカラスのほうがいいの,かまびすしいことおびただしいです。オペキチですね。ありゃ,差別用語かな?
※紹介したYouTubeが削除されていることがあります。

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