2019年1月号掲載
物見遊山のフラヌール または聴かずに死ねるかクラシック その11
中木 高夫 看護ウォッチャー 
マンハイム②

オペラのたのしみの1つはアクシデントだとか。にもかかわらず,そこに名演が生まれるのが音楽の不思議さ。Dr.NAKAKI,アクシデントのなかの今夜の「ばらの騎士」,満足されたご様子です。


11月15日(水)
 地元ハイデルベルクのテアターのオーケストラのコンサート。ヴェルディの大曲「レクイエム」。音楽監督エリアス・グランディの指揮,合唱はバッハ合唱団ハイデルベルク・フリーデンス(平和)教会聖歌隊。出てくる! 出てくる! 250人はいました。この人たちの家族が聴きに来たら満員御礼になるはずです。テアターの歌手ヒェスン・ナさんが最後のリベラ・メで貫禄のソロを示したことぐらいを報告して,あとはパス。

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11月19日(水)
 マンハイムのテアター(写真1)でリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」。「リボンの騎士」じゃないですよ。あらすじからいきましょう。
写真1 マンハイムのテアター
 【第1幕】18世紀中頃のウィーンの朝。陸軍元帥の邸宅。元帥夫人(マルシャリン)は夫の留守中に寝室にまだ若くて美男子の貴公子オクタヴィアン(女性のパンツ役でメゾソプラノが演じる)と一夜を過ごしたところ。突然,いとこのオックス男爵が訪ねてくる。好色で有名な田舎貴族。急いで小間使いの娘に変装したオクタヴィアンを口説こうとする。オックス男爵が訪ねてきた理由は,金持ちの新興貴族ファーニナルの娘のゾフィーと婚約したので,その儀式である「銀のばらの贈呈」を行なう「ばらの騎士」の紹介の依頼のため。朝の着がえや雑事をこなすなか(一声美声を聴かせるテノール歌手という係までいる)マルシャリンはオクタヴィアンを推薦。オックス男爵も了承して帰る。マルシャリンは若かったころを思い出し,過ぎ去った年月に憂いを感じる。オクタヴィアンに「わたしより若く美しい人のために,わたしから立ち去るのでしょう」と話す。オクタヴィアンは否定し,邸宅を去る。
 【第2幕】正装したオクタヴィアンはファーニナルの邸宅を訪れ,ゾフィーに銀のばらを贈る(このときの音楽の綺麗なこと!)。このときオクタヴィアンとゾフィーは一目惚れ。オックス男爵もやってきて下品に振る舞う。ゾフィーは結婚が嫌になり,オクタヴィアンに助けを求める。下品なオックス男爵に怒ったオクタヴィアンはオックス男爵の腕に剣で傷をつける。オックス男爵は大げさに騒ぎ,ゾフィーの父親ファーニナルはこの事態に娘を叱りつける。騒ぎがおさまったころ,オックス男爵にマルシャリンの小間使いの娘からのお誘いの手紙が届く。オクタヴィアンの悪だくみであることも知らず男爵は勇んで出発。
 【第3幕】郊外にある居酒屋の小部屋。小間使いの娘に扮したオクタヴィアンとオックス男爵。オクタヴィアンが男爵をからかっているときの醜態(男爵の子どもたちが大勢出てきて「パパ,パパ」と歌うのが傑作!)を見たファーニナルは,男爵に愛想を尽かす。そこにマルシャリンが。マルシャリンは毅然とこれ以上醜態をさらさないように出て行くように男爵に告げ,男爵を追い出す。マルシャリンとゾフィーの間でオクタヴィアンは戸惑う(この三重唱は独立して録音されるほど美しい!)。マルシャリンは身を引き,静かに立ち去る。残された2人は抱き合って愛を誓う。

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 軽快なホルンの響きで第1幕がはじまりました。「ばらの騎士」はドイツ語で「ローゼンカヴァリエ」。娘がこの曲を吹いたとき,指揮者は淡々と運びたかったらしいのですが,本番では弾く側が「ローゼンカヴァリエ~?」というように思い入れたっぷりと弾いたそうです。そんなに愛されているオペラなんですね。
 今回の演出はオーソドックスです。服装も18世紀風です。フランスよりもちょっと地味でしょうか。マルシャリンは細身の上品な感じ。ちょっと色っぽさには欠けるかな。ズボン役のオクタヴィアンは残念ながら身長が低い。でも声はよさそうです。オックス男爵は,この役のために生まれてきた感じ。デブ(おなかに何かを入れているでしょうが)で,好色そうで,でも少し可愛い感じです。マルシャリンの朝のお支度のドタバタにはたくさんの人が出てきます(写真2)
写真2 朝のドタバタにオックス男爵が現れる
写真3 壁に大砲が飾ってあります
 第2幕はファーニナルの邸宅はなぜか大砲が壁一面に飾ってあります(写真3)。床にも数台並んでいます。ここにはファーニナルの使用人やオックス男爵の使用人が多数入り混じるのですが,ファーニナルの使用人は制服で色が統一され,オックス男爵の使用人は田舎者風なのですが同系色で統一されていて,区別がつけやすくなっています。聴きどこの「ばらの騎士の登場の音楽」のきれいなこと! ゾフィーに「銀のばら」を渡すところです。いままでに観た本番やDVDでは,このばらの騎士として出てくるときは真っ白の服を着ていたので,ここでも白い服と思っていたのですが,黒でがっかりです。そうそう,ゾフィー役の歌手は背が高いでしょう。実は風邪で声が出ず口パク(本当は閉じていたのですが)の演技をして,急遽フランクフルトのテアターからの代役が舞台の右袖で歌うというハプニングもありました。
写真4 マルシャリン,カッコイイでしょ
 第3幕はかなりみすぼらしい舞台です(写真4)。居酒屋の小部屋がラブホになっているのですから仕方がありません。マルシャリン,カッコイイでしょ。美しい三重唱のあと,マルシャリンがさみしく去るシーンは案外スッと出て行ってしまいました。残された2人はベッドのうえで愛を歌います(写真4)
 今回のマンハイムのテアターは満足でした。

おすすめのYouTube

YouTubeでは,「rosenkavalier」と入れると,カラヤンの有名な1960年のザルツブルク音楽祭での録画( 「Richard Strauss: Der Rosenkavalier – Salzburg, 1960」)やカルロス・クライバーの1979年のバイエルン国立歌劇場での録画( 「Richards Strauss Der Rosenkavalier Carlos Kleiber part 1 1979」)や1994年のウィーン国立歌劇場での録画( 「Carlos Kleiber Der Rosenkavalier 1994 part 1」)があります。ほかにもさまざまな公演記録があるので人気の高さがわかります。「karajan」や「kleiber」を付け足して検索すると一発で行きあたります。
※紹介したYouTubeが削除されていることがあります。

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