2019年4月号掲載
物見遊山のフラヌール または聴かずに死ねるかクラシック その14
中木 高夫 看護ウォッチャー 
パリ③

前回に続き,パリ4 日目の夜はパリオペラ座へ。舞台上の大理石に皇帝の顔が掘りあげられていく? なんだかすごそうなパリ日記,はじまります。(誌面連載ではお見せできなかったカラー写真でご覧ください!)


11月25日(土) モーツアルトの「皇帝ティトゥスの慈悲」
 サントゥスタッシュ教会から帰って,夜7時半からはパリオペラ座ガルニエでモーツアルトの「皇帝ティトゥスの慈悲」。宿舎ノルマンディホテルのすぐそばのオペラ通りの突き当たりにあります。建物自体が美術館のように綺麗! キレイ! 天井画がシャガール作というので有名です(写真1)
写真1 パリオペラ座ガルニエの天井画(シャガール作)
席はBalcon-Place 55S。このSがクセモノでした。つまり補助席なんですね。みなさんが席に着いてから,やっと案内されました。仕方がない。チケットを買ったのが遅すぎました。
 演目はモーツアルトの「皇帝ティトゥスの慈悲」。オペラセリエといって,ローマ時代の物語などを題材にします。深刻ぶっていて,あまり期待しないでチケットを購入。176ユーロでした。

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 あらすじです。
 【第1幕】ローマ皇帝ティトゥス(在位79-81)のローマ。先々代の皇帝の娘ヴィテッリアはティトゥスの妃となって再び権力を握りたいと思っていた。だが,ティトゥスがユダヤの王女を妃に迎えることを知り,皇帝暗殺を企てる。ヴィテッリアは自分を愛する貴族セストに暗殺を命ずる。セストはティトゥスの友人にして忠臣であったが,悩むものの彼女への愛から暗殺を引き受ける。しかし,ティトゥスの結婚が中止となり暗殺計画も中止。ティトゥスはセストの妹セルヴィリアと結婚すると発表。しかし,セルヴィリアは兄セストの友人アンニオと婚約するつもり。セルヴィリアは直接ティトゥスに自分の気持ちを伝える。ティトゥスはその願いを快諾して結婚をやめる。ヴィテッリアはこのことを知らず,セルヴィリアが妃に選ばれたと聞いて再び暗殺をセストに命令。ところが,ティトゥスはヴィテッリアを妃とすると発表。ヴィテッリアは暗殺を中止しようとしたが,セストは宮廷に火を放ってしまっていた。
写真2 第1幕のはじめ
 【第2幕】だが,皇帝ティトゥスは無事だった。ヴィテッリアはローマから逃げるようにセストに言ったが,セストは皇帝の近衛長官プブリオに逮捕される。ティトゥスは友人の裏切りに戸惑い,暗殺の理由を聞くが,セストは答えず死を望む。ティトゥスは苦悩するが,暗殺は死罪。ヴィテッリアは自分の名を口にしないセストに心を動かされ,皇妃の夢をあきらめて罪を告白。ティトゥスはこれで友人を救えると安堵するが,また別の罪人に悩み,結局2人とも許すことにした。ローマの人々は皇帝ティトゥスの慈悲を讃える。

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写真3 第1幕でセストが悩む場面
 席に着くと,舞台の幕がこのオペラを象徴する絵のようです。真ん中に指揮者がいるのも面白いです。ローマ時代が舞台なのに,なぜかモーツアルト時代の服装。まあ,はやりの下着姿よりはずっとましです。セットはほぼ1種類で,大きな大理石に皇帝の顔が時間を追うごとに掘りあげられていきます。
 第1幕では大きな四角柱の大理石の塊です(写真2)。ティトゥスは白,ヴィテッリアは赤,セストは明るいグレイ,アンニオとセルヴィリアのペアは黄色,近衛長官プブリオをはじめとする宮廷に仕える人たちは黒というように,わかりやすく色分けされています。
写真4 第2幕でセストがプブリオにつかまる場面
写真5 皇帝ティトゥスが慈悲を示す場面(ヴィテッリアが白い服!)
 第1幕の終わりの幕は剣で心臓を刺す絵。シャガールを現代風にアレンジした感じです。
 最後は大喝采で終わりました。
 新発見はセストを歌ったマリアンヌ・クレバッサ(Marianne Crebassa)というメゾソプラノ。まだ30歳なのにうまい! 終演後もひときわ大きな拍手がなっていました。

おすすめのYouTube

まず「marianne crebassa」から。集録時間が短い録画がたくさん出てきます。いちばん長いのはミンコフスキーとのガラコンサートでしょうか。 「Mozart Gala 2012 (Les musiciens du Louvre and Marc Minkowski)」 でも出演は少しだけですね。「人気の動画」というのがうまくアルバムをつくってくれていいですね。CDの録音風景もあります。可愛いし,うまい!  オペラの全曲では「mozart tito」で検索。ジャン=ピエール・ポネル演出のウィーン国立歌劇場の1980年版がありますが,もっと新しいほうがいいでしょう。「Gregory Kunde-La Clemenza di Tito 2011」ではどうでしょう。
※紹介したYouTubeが削除されていることがあります。

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